玉座取りのゲームに正義は無い(ネタバレ無し)

 またゲーム・オブ・スローンズの話だ。こいつ一生ゲーム・オブ・スローンズの話してんな……。

 

  ところで、今回の記事はゲーム・オブ・スローンズの鑑賞をオススメする内容ではない。HBOからお金を貰っている訳でもないし、こういうのもたまにはいいだろう。かなり無礼かつ挑発的な言葉を選んだ部分があるので、貴重な休日の午後を安らかに過ごしたい人は読まない方がいい。というかそれ以前に、このブログの読者3人くらいしかいないのではないだろうか。アクセス数の9割は自分がクリックしたときのものなのでは?どうでもいい。本題に入ります。

 

 

折れぬ、枉げぬ、まつろわぬ

 前の前の前の前くらいに、善悪とは何か?正しい事とは?みたいな話を書いた気がする。結論から言うと、そんなものはない。私はブログを3秒で終わらせるのがうまい。

  じゃあどうしてまたそれを蒸し返すんだよ?……それはな、みんな善悪二元論とか勧善懲悪とかそういうわかりやすい物の見方が大好きで、すぐキャラにわかりやすいレッテルを貼り、こいつは良い奴だあいつはクソ野郎だと決め付けたがるからだ。「正義の反対は悪ではなく別の正義」とかそれっぽいことを言われると、正義についても悪についても自分では何一つわかっていないくせに、何だか良い話を聞いて啓蒙されたような気分になっちゃうからだ。

 世の中に蔓延る悪徳をバッサリ斬り捨て、屁理屈をこねくり回すインテリぶった野郎を正論でコテンパンにするのは気持ち良いよな……。だが、その手の快感に溺れて己を見失っているやつはシーズン1の途中あたりで足元をすくわれて死ぬゲーム・オブ・スローンズの世界では、美徳も正論も主人公補正も一切通用しない。そういうドラマではない。スカッと後味の良い爽快感は期待するな。いいか?だめか?どっちにしろすぐわからされることになる……身をもって……。 

 

人は皆死なねばならぬ

「いや私はそんなアホじゃないし!世の中の複雑さとかそういうのちゃんとわかってるよ!」……本当か?「だから何事にも偏見を持たず、人の在り方の多様性を認めて、自由かつ公平な精神で正しく生き」嘘だな。ここが<黒と白の館>ならあなたは即フェイスレス・メンに囲まれて棒で叩かれているところだ。

 ゲーム・オブ・スローンズには、人が自分でも気付いていない心の内面を鏡のように映し返し、容赦なく突きつけてくる仕掛けが巧妙に織り込まれている。あなたは賢いので、きちんと内省できるだろう。劇中のキャラクターに向ける視線や、起こったイベントに対して抱く感情をよく見つめてみろ。どうだ。自身の人生のバックグランドと、性格を形成するバックボーンによって偏向された物の見方が、そのまま現れているではないか。自分に嘘をつくことはできない。そのことに気付いてしまった時、あなたが依って立つ自由主義の精神は曖昧になり、善悪の判断基準は揺らぎ始め、もはや何も信じられず、目の前が真っ暗に……そしてシーズン3の後半あたりで息絶える。たとえ生き延びたとしてもシーズン5で止めを刺される。ちなみに私はシーズン4で死んだ。あまりに苦しくてとても観ていられなくなってしまった。しかしそれを乗り越えれば……

 

死せる者は二度と死なず

 よくやった。自分の本当の姿を受け入れたな。ここまで来たらもうわかったはずだ。ゲーム・オブ・スローンズは歴史ファンタジーの皮を被った現代のドラマだということを。登場人物たちはあなたと同じく、より良い世界を作ろうとしたり、より良い人生を送ったりしようとして、その過程で悩み、苦しみ、躓き、転び、そのまま死んだり、また立ち上がったりする。そこには決して他人事とは思えないリアリティがある。私はプロの批評家ではないのではっきりとこれがそうだとは言えないが、劇中には人の内面の葛藤だけではなく、いま我々が現実世界で直面している問題の暗喩も随所に仕込まれている。ゲーム・オブ・スローンズが(日本と北朝鮮を除く)全世界で熱狂的に盛り上がっている理由のひとつはそういうところにあるのだと確信している。本当にすごいドラマですよこれは。シーズン7最高だった。もうね、泣いちゃう。

 

一族、本分、名誉

 泣いちゃった……。いや、なんか悲惨で苦悩に満ちた部分だけ強調してしまったけどちゃんと楽しい話もあるぞ。暗闇の中で輝く蝋燭の美しさよ。ゲーム・オブ・スローンズはこの上なく深い愛と友情の物語でもあるのだが、私は男女の愛についてはちょっとよくわからないので、家族の愛の話を書いて終わりにしよう。

 ウェスタロスの貴族はそれぞれ自分たちの標語(モットー)を掲げている。家訓みたいなやつだ。有名なのはスターク家の『冬来たる』だが、私が一番好きなのはタリー家の『一族、本分、名誉』。これが裏のテーマだと思っているくらい好き。FamilyとDutyとHonorは騎士にとって最も分かち難く、最も引き裂かれやすいものだ。家族を守るために名誉を捨てられるか?義務を果たすために家族を犠牲にできるか?極限の状況下で、人は決断を迫られる。全7シーズンを通して常に迫られ続ける。ファイナルシーズンでもまた迫られそうな気配がしている。そう、家族……。これ以上は本編の内容に触れそうなのでやめます。せっかくなので次回は名家と旗手の話でも書いてみることにする。おわり。

 

 

 

 

 最近ずっとBBCの教育番組を観ている。恐竜特集を視聴しながら、小学生の頃は恐竜博士になりたかったことを思い出し、今パソコンの前で無限にダラダラしている半ニートは誰だという気持ちになった。アブスターゴ社の治験バイトで貰えるお給金は雀の涙に等しいので、もっとマシな勤め先を見つけなければ。腎臓は売りたくない。