脳が詰まってしまったら

 

 ………………どうする!?

 

 いやどうもできんが。どうにもなりません。脳細胞は死んだら終わり。リスポンさせられるのは神だけ。聖書にも書いてある。そしてほとんどの患者はラザロではないし、ほとんどの医者は神の子ではない。ゴチャゴチャ言わずにこのゼリーみたいな病院食を吸ってはよ寝んかい。ちなみにイチゴムースっぽい見た目のおかずからは鮭の味がするぞ。デザートかと思って最後に口に入れたらびっくりしちゃった。

 私が倒れた日、最初に診てくれたお医者さんに「これ……治るんですかね……?」と尋ねたところ、「リハビリ次第で動くようにはなると思います」という風に答えられた。3か月ほど病院にいたが、誰も「治ります」とは言わなかった。治らないからだ。はっきり明言してしまうと私がショックを受けると思って気を遣ってくださったらしい。ありがとう。(しばらく後、私は新型コロナワクチンめっちゃ打ちたいマンになるのだが、それはこの時病院の人たちが皆とても親切かつ丁寧だったので、医療・薬・その他病院に関する諸々へのある種の恐怖や不信感がすっかり消えていたから、というのがある。同時に、なんか面倒でひたすらうるせえ感じの奴がいかに周りの迷惑になるかというのも身をもって学んだので、土壇場で接種するのしないのどうのこうのとグチグチ言いたくもなかった。デルタちゃんに罹って後遺症が残るのも嫌だった。後遺症ならもう間に合ってます、一生分は。)

 

 ビー玉3つ分の脳細胞が消滅した直後のヤバヤバ生活について、今までSNSで自虐して遊ぶくらいしかしてこなかったのだが、社会復帰をするにあたって療養期間の出来事について真面目に話す機会が増えた。どの程度歩けるのか、電車・バスには乗れるのか、そもそも意識は正常か、等々……。だから、思い出せる分だけでも思い出してここに書いておくことにする。もし再発すれば、残りの脳細胞が記憶ごと吹っ飛んでまた一から体験学習しなきゃいかんハメに陥らないとも限らない。あれは効果があったとか無かったとか、それよりこっちを重要視すべきだったとか、反省点が色々とあるのだ。

 かなり差し迫った意味での備忘録として、入院、リハビリ、退院、通院、日常生活の記憶を残しておく。書くだけ書いて何にも使わず終わりならそれでもいい。千年後の学者が「ふ~ん21世紀の身障者ってこんな感じだったのか~」っつって人類総サイバネ化の歴史みたいな講義のネタにするんでも何でもいい。とにかくPCが使えるようになった今、ちょっと珍しい体験をどこかに残しておきたい気持ちになっている。

 

 

 

 ところで、尋常じゃない勢いの頭痛がするとか、前後左右の認識ができないとか、顔が歪んでいるとか、景色が途切れているとか……はっきり言って未収用のSCPに曝露したとしか思えない症状が現れたらすぐに119番通報すべきだ。大丈夫か大丈夫じゃないかはあなたが決めることではない。私は自分で大丈夫だと判断して二度寝したら体がダメになった。あと1時間受診が早ければ助かった部分もあろうに……。片耳がぶっ壊れたせいで映画館に行っても音が散って集中できないし、こだわりのオーディオ環境も使えなくなったし、後ろから車が来てもわからないし、それだけでも散々だ。それに本当にSCPが原因だったらそっちも収容できて一石二鳥だからやっぱり通報しよう。おわり。