外来でのこと、認識のこと、自己超克のこと

 

 元日のお昼前ごろ、すさまじい頭痛と共に目が覚めた。とても起き上がれない。ひどい風邪を引いたようだ。もう寝正月にしよう。コロナだったら面倒だが、熱も咳も無いしおそらく大丈夫か。二度寝の態勢に入るとすぐに意識が消滅した。ここで新年最初のまさか自分がポイントを大量獲得してしまう。

 家族は私が寝込んでいるらしいと知っていたが、昼まで寝るのはいつもの事だし、呂律が回っていないのは寝起きならそんなもんだし、しつこく起こしには行くまいと思ったらしい。まさかこいつがポイント……ではなく、これは常習的に遅寝遅起き生活をしていた私の自業自得による失点である。

 

 そしてたぶんお昼過ぎ、こいつさすがに起きてこなさすぎだろうと思った家族に声をかけられたが、なんと返事ができない。口が動かない。頭がものすごく痛い。物理的に起き上がれない。無理に体を起こそうとして嘔吐してしまった。視界がおかしい。色はわかるが輪郭がわからない。後期印象派の絵画みたいだ。これは一体どうしたことか。今は何時なのか。わからない。ここから数日間、明暗の違いでしか時間を把握できなかった。単に時計が見えないからである。頑張れば見えるのなら『見れない』と書くが、頑張っても見えないので、つまりもうさっぱり『見えない』のだ。当然ながら文字も見えないので、デジタル時計があっても読めないか、そもそも時計サイズの大きさならそれ自体を見つけられなかっただろう。おそらく瞳孔と眼球の筋肉が狂っていたのだ。ついでに内耳と脳の接続も狂っていたので平衡感覚が失われており、床を這って進み、記憶を頼りに洗面所まで行き、便座に掴まりながら用を足し、父の肩を借りて車まで歩いた。家を出る前に水と一緒に粥かゼリーのようなものを口に入れてもらったような気がするが、水しか喉を通らなかった。

 後部座席でぶっ倒れている間ずっと気分が悪く頭を起こすこともできかったので、持ち物について少し考えてみた。あっ……保険証と免許証とスマホ忘れた……。身元不明でも急患を断らない人道的配慮が身に沁みるね……。結局、スマホなんかは持ってたところで画面が見えず指も動かないから忘れてもよかった。それより病名がわかった時点で運転禁止令が出て、取りたてホヤホヤの免許証が身分証明機能付き紙切れになったショックはデカかった。まだ1週間も乗ってないのに……!

 

 病院に辿り着いたものの相変わらず体は言う事を聞かず、警備員の方が車椅子を持ってきてくれたので、それに乗って入った。この時、父が「少しは自分でやれ!」と、つまり車輪の横の輪っかなり何なりを使って自分で進まんかいという意味の事を言ってきたのだが、今思えばそれは理不尽すぎるだろ……

 最近になって知ったが、介助者は座っている人の手足が挟まれないように見張っておいて、あまりジタバタさせるべきではないらしい。勉強になる。こうなる前に知りたかった。危ないし。まあ自分で進もうとしても左腕、つまり左の車輪しか動かせないので延々とその場で右旋回し続けることになるし、周囲が見えていないので右旋回し続けていることにも気付かないという、真夜中に計器が故障した飛行機の挙動みたいな感じになってしまうのだから、大人しく座っていて正解だったのだ。ちなみに車椅子に運転免許は必要ない。よかったね。よくねえよ。

 

 私が入口付近でジタバタしている間に、母が受付を終わらせてきてくれた。問診票らしき紙が渡されたが、字が見えないし鉛筆も持てないので、母に書いてもらった。「はい」と「いいえ」の二択は上半身を頭ごと前後に揺らすか左右に揺らすかで判別してもらった。お薬手帳も忘れたので現在服用している薬の欄は記憶を頼りに口述筆記でなんとか……したかったが子音が発音できなくて正確に伝えられない。フヤアァアゥウウ!じゃねんだよな。でも左手は動く、モールス信号でも覚えておけばよかった、これもしかして『ジョニーは戦場へ行った』で見たやつでは……。無情にも追加されていくまさか自分がポイント。どうにもならない。ここまで何分、何時間経ったのか。何もわからない。近くで扉が開き、人影が出てきた。私の番が来た。

 

 

 

 流れと全然関係なさそうでちょっと関係ある話を書いておく。時計の話で少し触れたが、健常者と障害者の頑張れば何とかなる物事と頑張っても何にもならない物事の認識の間には、大きく、埋めがたい断絶が横たわっている。退院して1年以上経った今でも、思いがけないところから現れるこの溝に引っかかってしょうもない苦痛を味わっている。一生味わい続けるだろう。以下に、まだ誰にも言ったことのない……というより言っても理解されないだろうと半ば諦めてかけている恨みつらみと嘆きと愚痴をグチグチと連ねる。

 普通の人間同士の認識の差異は、比較的小さいか、双方の努力によって克服可能であるか、そもそも非常識であるとして処理されるため、それなりに円滑な合意の形成に至る。認識の溝を無視して勝手に話を進めてくるやつは、悪質クレーマーとかハラスメントとか想定外とかいう名前で類型化され、対策が取られる。例えば、お酒が飲めない人に飲酒を強要した場合、それはアルハラである。誰かに生身で宇宙に行ってくれと依頼した場合、現実とSFの区別も付かない馬鹿なのかなと思われる。当然である。「当然だ、常識だ」という合意ができている。(化外の地に住むバルバロイのありえん狼藉に悩まされている方には申し訳ないのだが、あくまで一般論としてはこんな感じだろうと思われる。)

 健常者と障害者との場合には……わかりやすく腕が無いとか、白杖を突いているとか、こういう誰が見てもわかりやすい溝ならばまあまあ埋めやすい。骨折したてホヤホヤでギプスを付けた人をバスケに誘うやつはそういない。誰が見ても道理に適っているとわかる物事ならば、合意の形成は容易である。一方、「その活動にはコミットできない」というマイナス方向の合意は障害者を疎外する要因にもなる。障害者を助けながら自分の面倒も見る余裕のある強者ばかりではない。大半の人にとって、私のような存在は、憐れで、怖くて、邪魔なのだ。どうしても大縄跳びに入れないやつが一人いる。今さらルールを変えたら、他の全員の努力はどうなる。あえてこいつを入れてやるメリットが無い。こいつは要らない。そこにいるのはいいが、こっちに来るな……。ほとんどの人が心の最奥で優生学の芽を育てている。最も無邪気な者が、最良の栽培者になり得る。その根は育ち、広がり、精神を縛り付ける。当の障害者でさえも、そうなる

 幸いにも私には、目に見える程の後遺症は残らなかった。自力で立ち上がり、歩き回れるまでに回復した。それなりに自由を取り戻した。では何が不満なのか。予想以上に回復しすぎてしまったのだ。は?意味が分からない。ワガママか?九死に一生どころか四生くらい得たんだから超ラッキーだろう……。だが、徐々に思い知ることになる。この、パッと見健康そうだが実は障害者というクッソ面倒な立ち位置の弊害を。ある種の謙虚さは甘えと見分けが付かないという現実を。

 具体的な例を挙げると、まず障害者手帳がもらえない。大学中退かつ肉体労働しかできない私がデスクワークを強く希望するにあたって、身体を動かせないことの証明が求められた。とりあえずハローワークに手帳を持って行けばいいのだが、どうしてもその手帳を交付してもらえる基準を満たせない。頭も手足も全く動かない訳ではないから著しい失調とまでは言えないということだ。そんなバカな。神経が壊死してるんだぞ。せっせとリハビリに励んだ結果がこれか。仕方がないので精神障害の方で無理やり取った。身体と精神では給与に9万円ほど差があるらしいが、嫌なら障害者雇用枠狙いをやめて健常者と同じ土俵で就活バトルするしかない。勝てねえ。ニッチな分野を専攻した時点でどうせ就活難民になるだろうと思っていたが、こんな状況は想定してねえ。人生を失敗する才能を低く見積もりすぎていた。まさかこれほどとは……。

 また、私が皆の邪魔にならぬよう引っ込んでいる時、なんというか……単に怠けているように見えるらしい。これを指摘されるとかなり効く。つらい。認識の溝が埋まらないそこに溝があるという事実自体を理解してもらえない。退院してすぐの頃、家族と買い物に行った際に、私が軽い荷物しか持ちたがらないという理由で喧嘩になり、体が耐えられないという弁明を聞き入れてもらえなかったため、わざと重い袋を持って当然のように引っ繰り返る様子をじっくり見てもらうという強硬手段でわかってもらった。自分でもアホかと思うような話だが、ここまでやらないと理解が得られないのだからやるしかない。断絶が認識されないならば、認識できるように可視化するしかないのだ。わざわざ無能のレッテルを貼ってもらうために無能を演出しなければならないとは……私にだって最低限のプライドが……しかし実際に無能なのだから……情けない!気が狂う!助けて!大掃除やら荷物運びやらに私が参加しても逆に迷惑をかけてしまう、なぜなら私自身がみんなのお荷物だから。皮肉がキツすぎる。いっそ死んでしまいたい。やっぱり『ジョニーは戦争へ行った』じゃん。もうだめだ……。

 

 これ以上の状態は望めないところまで努力して、なお困難に直面することがあった時、もはやそれはcan't doやdon‘t try to doではなく、beであるただ、そうあるもの。自分の希望を差し挟む余地はない。祈ったところで全てが思い通りになるわけではないことは、十分よくわかっている。目の前の現実を否定することは、即ち現実逃避である。状況を理解し、肯定し、そうあるものだという前提に立って初めて、自己超克に挑むことができる。簡単に「やればできる」などと言うのは、現実を直視する勇気のない楽観主義者か、さもなくば真面目に考える気がない全くの傍観者か、どちらかだ。根拠のない励ましは、真剣に試みる者に対する侮辱だ。「できそうにない」と素直に認め、可と不可を明確にし、可のリソースで不可を補い、効率化し、最適化する……そのような試行錯誤をこそ、努力と呼びたい。

 私は今日までずっと言われてきた。「努力が足りない」「本気で困っているなら動けるはず」「やる気がないからできない」と……。何が「努力が足りない」だ。ふざけるな。じゃあなんだ、パラリンピック選手はオリンピックの出場権を勝ち取る努力が足りなかったからパラリンピックに出ているとでも言いたいのか?ナンセンス。どういう論理だ。人を馬鹿にするのもいい加減にしろ。努力と苦行を区別して考えられないのか。頼むからやめてくれ。こういう言説はもう聞き飽きた。それは既に満ち足りている者の耳に聞かせる言葉だ。既に手に入れた者、既に「できた」者を満足させるための甘言だ。つまり、自分に向かって言っているのだ。自分に言い聞かせたところでその努力なるものの成果が灰燼に帰す可能性は消えてくれないのだが。ただ、私の耳に入れないでくれ。ただ、愚かさだけを忠告してくれ。愚かさゆえに笑われるのは我慢できる。やっと理解しつつある、屈辱は人間を成長させてくれることを。しかし、疲労と苦痛に喘ぐ者をさらに惑わせる言葉だけは、未だに聞いていられない。その言葉で育つのは、的外れなアドバイスで人を困らせるような真似だけはすまいという決心だけだ。では何と言ってやればいいのか。わからないのか。では何も言うな。もしくは自分に聞け、「わかろうとする努力が足りないのではないか?」と。

 

 

 

 …………ニーチェ先生は本当に的を射たことを言うなぁ~。19世紀ヨーロッパのどん詰まりの地獄で煮詰まった闇鍋みたいな雰囲気の本を最近ずっと読んでいる。ニーチェ先生「それ書いて大丈夫?」みたいなことを平気で書くので読んでて楽しいんだけど、ちょっと厳しすぎてついて行けない。でもすき。あとは『論語』、というか漢籍全般も読んでいる。読んでいるんだけど、時代によって注釈が恣意的すぎない?何か怪しいなと思ってネットで調べたら全然違う解釈が出てきてびっくりする。ところで、こういうの全部大学時代にやっとけという勉強を今さらするやつ、ザ・暇人という感じでいいですね。ノージョブだからね。時間ならいくらでもある……と見せかけて後から取り返しのつかない事態になって焦るやつだ。狂う!おわり!

 

 

 

予兆のこと

 

 実のところ、正月からめでたく救急科のお世話になる2週間ほど前、尋常とは思われないほどの頭痛に襲われて丸一日寝て過ごした、ということがあった。今思えばそれが全ての始まりである。だがその時は当然ながら、自分の動脈が損傷していることや、それを放っておくと致命的になり得ることなど知る由もなく、「とんでもなく不快な頭痛だったな……まあ治ったからいいか……」などと宣いつつ能天気に年末へ突入してしまったのであった。全然まったくひとつも治ってないし、能天気ではなく脳卒中になりはじめていることに、この時点では気付いていなかった。

 ただ、正常性バイアス的な何かというか、病院に行ってコロナを持って帰る方が危ないよね、もうアルファ株が来てるかもしれないしね、というような認識が、いや違う、正直言って、私より後に進学して私より先に就活を終えた親族が実家に凱旋しており、それどころではなかったのだ。私の小さな小さなプライドは静かに絶叫していた。年末のクソ忙しい時に検査行きたいなんて言ったらこいつ凱旋将軍ばかりチヤホヤされるのが嫌だからってなんか変なアピールで気を引こうとしている情けない奴と思われるかもしれない。自分の部屋を明け渡してリビングの端っこで生活するよう命じられたのがそんなに気に食わなかったか、いつまでもゴネやがって、誰の慈悲で屋根の下に入れてもらえてんのかわかってないね…………このような騒ぎを引き起こしたくはない。今は臥薪嘗胆、自立できるまで耐え忍ぶのだ。私は項羽ではないから平気で捲土重来を狙っていく。都合の良いプライドだな。

 発症まであと24時間、痛みも違和感も無く、ついでになんか尊厳というものが無いような気がする以外は普通の大晦日であった。ちなみにこの後、病院で尿道カテーテルを入れられる瞬間に、私に残された最後の尊厳が再発見された。看護師さん3人くらいに見守られながら袋の中にすげえ大量のおしっこを出した。最後の尊厳は砕かれた。

 

 こうして書き出してみると、君本当人生失敗上手というか、全ての判断が間違っているというか、何もかもアホとしか言いようがない。そういうコントか?こんなに綺麗な失敗の連鎖ってあるんだ。『メーデー!:航空機事故の真実と真相』で紹介されるやつじゃん。そしてこの時家から一番近い大病院は医療崩壊寸前であった。よく受け入れてもらえたな。アホの私がなぜ生き延びてしまったのか、なぜまだ生きているのだろう、こんなに人様に迷惑かけて生きてられるなんて信じらんないね、世が世なら切腹すら許されない間抜けぶりだよ…………この罪悪感が社会復帰の動機の一部となるのだが、それはまた別の機会に書こうと思う。おわり。

 

 

脳が詰まってしまったら

 

 ………………どうする!?

 

 いやどうもできんが。どうにもなりません。脳細胞は死んだら終わり。リスポンさせられるのは神だけ。聖書にも書いてある。そしてほとんどの患者はラザロではないし、ほとんどの医者は神の子ではない。ゴチャゴチャ言わずにこのゼリーみたいな病院食を吸ってはよ寝んかい。ちなみにイチゴムースっぽい見た目のおかずからは鮭の味がするぞ。デザートかと思って最後に口に入れたらびっくりしちゃった。

 私が倒れた日、最初に診てくれたお医者さんに「これ……治るんですかね……?」と尋ねたところ、「リハビリ次第で動くようにはなると思います」という風に答えられた。3か月ほど病院にいたが、誰も「治ります」とは言わなかった。治らないからだ。はっきり明言してしまうと私がショックを受けると思って気を遣ってくださったらしい。ありがとう。(しばらく後、私は新型コロナワクチンめっちゃ打ちたいマンになるのだが、それはこの時病院の人たちが皆とても親切かつ丁寧だったので、医療・薬・その他病院に関する諸々へのある種の恐怖や不信感がすっかり消えていたから、というのがある。同時に、なんか面倒でひたすらうるせえ感じの奴がいかに周りの迷惑になるかというのも身をもって学んだので、土壇場で接種するのしないのどうのこうのとグチグチ言いたくもなかった。デルタちゃんに罹って後遺症が残るのも嫌だった。後遺症ならもう間に合ってます、一生分は。)

 

 ビー玉3つ分の脳細胞が消滅した直後のヤバヤバ生活について、今までSNSで自虐して遊ぶくらいしかしてこなかったのだが、社会復帰をするにあたって療養期間の出来事について真面目に話す機会が増えた。どの程度歩けるのか、電車・バスには乗れるのか、そもそも意識は正常か、等々……。だから、思い出せる分だけでも思い出してここに書いておくことにする。もし再発すれば、残りの脳細胞が記憶ごと吹っ飛んでまた一から体験学習しなきゃいかんハメに陥らないとも限らない。あれは効果があったとか無かったとか、それよりこっちを重要視すべきだったとか、反省点が色々とあるのだ。

 かなり差し迫った意味での備忘録として、入院、リハビリ、退院、通院、日常生活の記憶を残しておく。書くだけ書いて何にも使わず終わりならそれでもいい。千年後の学者が「ふ~ん21世紀の身障者ってこんな感じだったのか~」っつって人類総サイバネ化の歴史みたいな講義のネタにするんでも何でもいい。とにかくPCが使えるようになった今、ちょっと珍しい体験をどこかに残しておきたい気持ちになっている。

 

 

 

 ところで、尋常じゃない勢いの頭痛がするとか、前後左右の認識ができないとか、顔が歪んでいるとか、景色が途切れているとか……はっきり言って未収用のSCPに曝露したとしか思えない症状が現れたらすぐに119番通報すべきだ。大丈夫か大丈夫じゃないかはあなたが決めることではない。私は自分で大丈夫だと判断して二度寝したら体がダメになった。あと1時間受診が早ければ助かった部分もあろうに……。片耳がぶっ壊れたせいで映画館に行っても音が散って集中できないし、こだわりのオーディオ環境も使えなくなったし、後ろから車が来てもわからないし、それだけでも散々だ。それに本当にSCPが原因だったらそっちも収容できて一石二鳥だからやっぱり通報しよう。おわり。

脳梗塞になってました

 

 何だこの人生は…………。

 

 右半身不随ということで、とにかく頭から爪先まで全ての動作が右だけ鈍い。

 朝起きたら右目の眼球があらぬ方向を向いて固まっており物が二重に見える、右耳があんまり聞こえない上にどこから音がしているのかわからなくなった、右手がプルプルしすぎて箸で豆腐が掴めない財布から小銭が出せない、右足の踏ん張りがきかないため下り坂で減速できずにコケる車の右側のドアから降りられない、腕の重さに体幹が耐えられず右肩ごと沈んでいく、右足の形が変わっており靴が合わないなど、地味に面倒な問題が大量発生している。助けて!

 「片手じゃ撃てないだろ!!!!」ってこんな感じなのか?まあそうなるよな。全然知りたくなかった……。

 

 スマートフォンとPCは主に左手で操作できるように訓練した。ギリギリ読めるレベルだが文字も書けるようになった。長期入院するからついでにやっちゃおうということで親知らずを破壊してもらった。禁煙は失敗した。痛みを感じる神経そのものがじわじわ窒息死していく痛みには耐えられたのに煙草の誘惑には耐えられなかったんですか?ベランダの段差を跨ぐたびにコケそうになるので減煙はしている。

 

 ハウス・オブ・ザ・ドラゴンの前に炎と血を読まなければ。今年の大河はいい国作ろう鎌倉幕府だったな。ドロドロの内戦ばっかりじゃねえか嬉しい!!!!!!!!

 

ゲーム・オブ・スローンズ完走(ネタバレ無し)

 

 オワッチャッタ………………。

 

 

 何も言う事ができない。何も考える事ができない。廃人になってしまった。廃人になって早10ヶ月、色々あった気がするが全部忘れた。何だったんだろうな。大変な事になっちゃったな。もう何もできない。何もできなさすぎてひたすらApex Legendsとスマートフォン向けゲームアップリを床に横たわりながらポチポチつついています。

 どうして………………………………………………。

 

 

 

  アークナイツを超やりしている。ドワーフ族のドゥリンというあまりにも特定ファンタジー作品おたくの魂を刺激するキャラが出てきたので「あっ絶対最初に昇進2レベルMAX潜在全解放して末永く仲良くしよ」と作戦記録をいっぱい食べさせたのだが、星2のキャラは昇進させられずレベルも30が限界だということがわかった。どうして。どうして。ところで基地で金塊を製造すると雀の涙くらいのお小遣いがもらえるということなので(私兵を雇って金塊を売り捌く製薬会社って何……?)金属加工が得意そうなドゥリンちゃんにいっぱい稼いでもらおうと思ったが、まさかの製造・貿易系スキル無所持。偏見はよくなかったな。じゃあ何ができるのかと言うと「働きたくなさすぎて一生宿舎にいたいので自己回復を遅らせつつ代わりに同室のオペレーターを爆速でヒールし労働に即復帰させる」というすごいやつだった。かわいいね。あと50%の確率で敵の術攻撃を回避できる。ちっちゃいから当たらないのね。かわいいね。これからもよろしくね。

 そんなところだ。おわりです。

ゲーム・オブ・スローンズ ファイナルシーズン公開まであと1日(ネタバレ無し)

 緊張で気がクルッチャウ………………

 

 

 先日クレカが突如爆発してAmazonプライム特典もHuluも使えなくなってそのリカバリーに奔走し、同時に持病の悪化でリアルの生活もダメダメになり、そんなこんなでこれまでのあらすじ復習まとめ記事などの更新をズルズル先延ばしにしていたら、GoTファイナルシーズン(シーズン8)世界同時放送まであと1日になっていた。はっきり言って私はまだ心の準備が一切できていない。え?本当に終わっちゃうの?マジ?本当に!これで!!終わってしまうのですか??????

 ドラマシリーズ履修者は公式が連投する不穏なプロモ映像に戦慄し、原作小説履修者は原作展開とドラマ展開の差異を照らし合わせながらの考察で脳がショート寸前、私は今後の展開がどうなっていくのか気になって気になって何も手に付かない錯乱状態。あまりのしんどさに耐えられず途中で思考を放棄し、GoTに全く関係のない中国の名作功夫映画を観まくって現実逃避していました

 

 最近の功夫映画の中ではイップ・マンシリーズがイチオシ、特に2はかなりの良作なのでみんなもぜひ観てくれ。功夫映画界の動けるおもしろデブ枠として活躍してきたサモ・ハン兄貴が大御所として年相応の貫禄を見せ付け、一方で加齢を感じさせないキレキレのアクションも披露。サモ・ハン兄貴についてはジャッキーと共演していた頃からイメージを更新していなかったのでドドン!と圧が重くなっていて驚いた。中国拳法の達人・主人公イップ・マンを演じるドニー兄貴は相変わらずの無双っぷり。だがしかし、ただ腕っぷしが強いだけでは激動の20世紀は生き残れない。無情な時代の波に翻弄されながら、それでも高潔な武道の精神を貫く漢たち…………ナイチャウ…………。

 

 

 

 あとこれは本当にどうでもいい私事ですが、やっと大学に復学することができた。昨日久々にキャンパスに行ったら以前とかなり構造が変わっていて道に迷ってしまったのだが、案内板の前であたふたする私を見て入学したての新入生だと思ったらしい通りすがりの学生の方がわざわざこちらにやって来て親切に解説して下さった。今後の学生生活について色々励ましの言葉も頂いた。ありがとう。でも実は私の正体は大学にもう7年近くも住んでいる狂人なんだ。フハハハ、ひれ伏せ。お前もどこかで何か一歩間違ったらこうなるかもしれんのだぞ。気を付けろよ。…………本音は、困っている私に声を掛けてくれた方の無償の親切心に触れられて嬉しかった。それだけです。過去10年間他人の良心に期待した結果ろくな目に遭わなかった記憶しかないが、この前期6ヶ月だけは、少しくらいは人を信じてもみてもいいかなと思った。正直まだまだ怖いのですが……。いつか、毎日電話やインターホンに怯えたり、発言中に緊張で過呼吸になったり、人ごみで手が勝手にブルブル震えたり、そんなことに悩まされない人生を送れるようになったらいいね。おわり。

玉座取りのゲームに正義は無い2(ネタバレ無し)

 今回は政治的な内容の記事です。ゲーム・オブ・スローンズと政治的正しさ……ポリティカル・コレクトネスについて。普段は現実でもネットでも毒にも薬にもならないことばかり言っている私だが、自由権の限界に挑みたくなる時もたまにはある。ウェスタロスには言論の自由が1ミリもないので一般ピーポーが余計なことを言うと木に吊るされるが、ここは日本なので安心だ。

 

 で、どうしてこんな話を始めたかというと、ハリウッド映画がポリコレを意識しすぎてつまらなくなったとかいう話を読んでしまったから……某スター戦争とか。つまらないのは10割脚本のせいだったと思うんですけど、一部の過激派が俳優個人に対するバッシング活動に走ったりして大混乱だ。そういうのはよくないからやめろ。私はポリコレ賛成派だ。自由、平等、博愛の精神を重要視している。

 うんうん、自由、平等、博愛の精神が大好きなこいつが大好きなゲーム・オブ・スローンズってのはよっぽどマイノリティや社会的弱者への配慮に溢れるドラマなんだろうな……。

 

 

 

 

 

 

 全然そんなこと無かった……。GoTの世界にまともな人権意識などというものはほとんど無い。どれくらい無いかというと「善人にも悪人にも死は等しく訪れる。死は神からの贈り物なんだよ。」と言いながら神に選ばれた者に死をプレゼントして回る暗殺教団のアサシンが真の平等主義者に思えてくるレベルで無い。ふざけているのか?特に女性の扱いは本当に酷いものだ。あまりに酷すぎてシーズン5あたりでついに人権活動家のみならずファンからもボロクソに抗議された。そういうドラマだとわかって観ているファンでも思わずキレちゃうくらいだから相当だ。私もキツすぎて観ていられなくなったのでしばらく視聴を中断して原作シリーズの方を読んでいました。

 さらに他の社会的弱者やマイノリティ……外国人、LGBT、異教徒、障害者、貧乏人、はみだし者……めっちゃ差別されている。ある身体障害者曰く「おれが生きていられるのはおれが貴族だから。農家の子だったら確実に井戸に投げ込まれて死んでた。」なるほど、そういう世界……。平民がお上にペコペコしながら生きるのも大変だが、貴族は貴族でノブレス・オブリージュというものがあるので、先頭に立てない奴、民を守れない奴、教養の無い奴は馬鹿にされ、軽んじられ、しょぼい窓際族として恥辱に耐えなければならない。運が悪いと窓から落ちて死ぬ。救いが無い。拙者過度に美化された中世的世界観大好き侍、こんな息苦しいファンタジーいやでござる。

 

………………

 

…………………………

 

…………………………………… ポリコレは?

 

 あります、あります。いや、ある、という表現はちょっとおかしいかもしれない。ここからは個人の感想だ。何言ってんだこいつと思ったらコメント欄で好きにけなしてくれ。

 GoTは能動的ポリコレをやっているのではないかと思う。なんじゃそりゃ。つまり、製作側が考えて作った「正しさ」を受動的に摂取するような、反ポリコレ派が言うところの正しさの押し付け、なる形態ではない。我々は登場人物たちが色々なことをするのを観て、色々なことを考える。こいつは子供を殺した、クソ野郎だ。こいつは仲間を救った、いいやつだな。こいつは嘘をついた、愛する人を守るためだ。え?じゃあ仕方ないのか?こいつは誓いを守った、そのせいで大勢死んだ。これは許されない……のか……?何を基準に判断すればいいのか?正しさとは一体何なのか?

 私がGoTから汲み取ったポリコレは、「これが正しい」ではなく「何が正しいのかお前が自分で考えて自分で判断しろ」だった。

 GoTのせいで私は完全に政治的に正しい素材だけで作った安心安全のお墨付きポリコレ弁当では満足できなくなった。自分で判断したいからと迂闊に過激な表現に触れてアレルギーを起こしたらどうしてくれるんだ。こわい。でも安心を失った代わりに自由を得た。世の中色々な人が色々なことを考えているからね。これが正しいからこれに従うべしと言われて、思考停止してハイと答えるのはなんだかちょっと……自由も平等も博愛も感じられない。これでよかったと思う。そんなところだ。

 

 ……また人をGoTから遠ざけるような記事を書いてしまった。逆に言うと過酷な境遇の中で世の中の理不尽さに立ち向かう人々の話でもあるということなので、そのへんは期待して観てほしいです。その証拠に、人気キャラランキングの上位を占めているのは、私生児、女性、外国人、LGBT身体障害者知的障害者、移民、元犯罪者……社会的弱者、マイノリティ、生き辛さを感じている人ばかりだ。ファンタジーでも現実でも生き辛いものは生き辛い。世知辛い。人に世知辛い思いをさせる最低野郎がぶっ飛ばされるのを見るとスカッとするよな。まあ最低でも最高でも関係なく平等にぶっ飛ばされるんですけど……そこまで平等にしてくれとは言ってねえよ。

 

 

 

 暗殺教団の話をしていたらスカイリムSEをやりたくなってきた。これまでのRPでは反社勢力である闇の一党を問答無用で壊滅させていたので、次は神からの贈り物をプレゼントする人になってみる。お前を見ている。ヴァラー・モルグリス。